おすすめ度:
架空歴史小説
機動戦士ガンダムが名作とされる理由に、それまでに無かったリアリティを持ち込んだという意見がある。善と悪の二項対立、そしてその中で、疑問も抱かずに戦う戦士たちというものが大半だったそれまでの漫画なりアニメなりと比べて、泣きながら、悩みながら戦うアムロは新鮮に、また人間味をもって、人々の目には映ったのである。 この銀河英雄伝説においては、賢君による専制国家である銀河帝国、衆愚政治に陥っている共和制の自由惑星同盟、商業に重点がおかれ、内政の自治権が認められているフェザーンという3つの地域を舞台に、覇権をめぐる物語が展開していく。3つの視点による、さまざまな考え方のせめぎあい。戦争に対して特徴的な考え方を持った、多くのキャラクターたち。そして、それぞれの立場から、架空歴史的なリアリティをもって進むストーリーは、今も人気を博すのにふさわしく、読み応えがある。
また、登場人物の言葉を借りて、投げかけられる指摘(民主共和制をして、自分たちの自由意志によって自分たち自身の制度と精神をおとしめる政体というもの、専制政治を否定する立場として、人民を害する権利は人民にしかないというもの、民衆の多数が、民主主義でなく独裁を望んだとしたら、そのパラドックスをどう整合させるのかといったものなど)は、政治について考えるきっかけになるかもしれない。
そしてひとつの区切りであるこの5巻では、専制国家の賢君、ラインハルトが言うような、皮肉な結果がもたらされることになる。
何よりエンターテインメントとして優れている銀河英雄伝説。ラインハルト、ヤンをはじめ魅力的なキャラクター、緻密な書き込み、そしてストーリーと、見所はたくさん。興味がある人は、とりあえず1,2巻くらいまでは読んでみてください。ちなみに自分は、おそらく多数派であろうヤン・ウェンリー派。